大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 創薬生命工学分野
伊藤 孝司 いとう こうじ
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生命活動を支える酵素の最先端で
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リソソーム酵素に着目
私たちの身体は大人の場合、60~70兆もの細胞からできていると言われています。そしてその一つひとつがまた立派な生命体です。その生命の活動を支えているのがタンパク質や「酵素」の存在です。
酵素は全ての生命体の生命活動に関わる大切な物質です。私たちの身体の中には6000種類以上の酵素があるといわれています。
だから酵素が欠けたり、異常を起こすと病気になります。それらは「酵素欠陥症」と呼ばれています。
伊藤先生は、この「酵素欠陥症」とガンに関して分子?遺伝子の細胞レベルで研究しています。酵素欠陥症として、伊藤先生が着目したのが細胞内の小器官のひとつである「リソソーム」です。リソソームは人間の消化管の役目をするもので、数多くの酵素が存在し、糖質や脂質などを分解する役割を担っていますが、これらの酵素の分解力の低下により、分解されない物質が体内に蓄積して異変を起こし、様々な代謝異常が発生し病気の原因となります。
一方ガンはDNA(遺伝子)の異常が重なったり、一個の遺伝子の異変によって発病するメカニズムが解明されていますが、1990年以降、酵素を補うこと(酵素補充療法)で治療が可能であることも解明され、抗ガン剤の開発にも寄与してきました。
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酵母で量産した酵素で脳疾患の治療をめざす
ただこれらの酵素は従来、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞に人の遺伝子を組み換えて培養する方法など、動物細胞を利用する方法がとられ、まだまだ生産コストが高く、また量産するのが難しいのが現状です。感染症の問題も指摘されています。アメリカの薬品会社が販売しているものの、非常に高価であることから、伊藤先生は、国内の最先端の研究室や研究者と情報交換しながら、こ